取組み内容

ドイツ語圏を中心に、ユダヤ系現代作家の作品を研究しています。彼らの作品は、親世代のホロコーストの記憶を扱いつつ、他方ではヨーロッパに現在進行形で広がる反ユダヤ主義-ユダヤ人への偏見に基づく差別や憎悪-を主題ともしています。

ホロコーストに対する深い反省はドイツやオーストリアにはそれなりに根を下ろしているのですが、近年のイスラム系難民、移民の欧州への流入が、ユダヤ人をも対象とする人種差別的思想を引き起こしたり、他方難民、移民自身が、反イスラエル感情から強いユダヤ人嫌悪を持っていることも少なくありません。その結果、ユダヤ系住民に対する襲撃事件は増加の一途をたどっています。

ユダヤ系作家たちは、この現状を憂い、文学という武器で戦っています。在外研究ではウィーンに滞在し作家たちにインタビューを行い、帰国後の演習では彼らの作品を読解したり、この状況に抗う様々な芸術家の取り組みを調査したりしました。

偏見、差別は人間の心の深層に巣くうものです。深層に働きかけるには、深層まで届く言葉が必要です。文学を通して差別と戦う取り組みを知ることで、日本の学生たちにも内なる偏見について深く考えて欲しいと思っています。

ウィーン1区にある市内最大のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)。外から中が見えないように設計され、襲撃に備えて入口は厳重に警備されている。
2019年ウィーンで開催された、強制収容所生還者たちの写真展。しかし夜間に何者かによって写真の布製パネルが切り裂かれる事件が起きる。市民は根深い反ユダヤ主義にショックを受けたが、有志により縫い合わされ、ムスリムの若者たちが昼夜を通しての巡視を買って出た。
ドイツ文学演習のグループ発表の様子。アクティブラーニング用の教室を使い、話し合いを重ねて発表内容を作り上げた。