取組み内容

 商学研究科博士前期課程の商業経営論特論(菊池一夫教授担当)の講義では、小売マーケティングや流通を対象にした授業が行われています。このなかで「食品流通3分の1ルール」という商慣行を取り上げた講義風景を見てみましょう。これは、食品メーカー、卸売業者と小売業者との間の商慣行です。1990年代、日本の小売業者は商品の“鮮度“を消費者に強調するために、食品メーカーや卸売業者に働きかけた結果、この商慣行は食品業界に定着しました。加工食品には「おいしく食べられる目安の期間」、つまり「賞味期限」が設定されています。この賞味期限が3分の1になる前に卸売業者は小売業者に納品しなければなりません。たとえば、ある商品の賞味期限が6ヶ月の場合には賞味期限が残り2ヶ月を切る前までに卸売業者は小売業者に商品を納入しなければなりません。商品を納入できない場合には返品や廃棄につながります。この商慣行は現在、食品ロス問題の要因の1つとして問題視され、改善が取り組まれています。
 つまりマクロ的な社会慣習(「制度」)は、企業のミクロ的な「マーケティング行為」から始まり、普及することで生成されますが、一度、制度が生成されると企業はそのルールの中で制約を受けます。こうしたメカニズムはミクロ・マクロ連結と呼ばれます。