取組み内容

植物は一度大地に芽生えると移動することができないため、刻々と変化する環境に適応しなければ生きのびることができません。したがって、自己成分を分解して再利用したり、細胞内有害物の除去を通して細胞内恒常性維持を図ったりする役割を持つオートファジーが植物の生存に重要であることは想像に難くありません。
我々の研究室では、『細胞が自分自身を食べる』機能・オートファジーが、独立栄養生物である植物において、どのような状況下で?いつ?どこで?誘導され、何を?どのようにして?認識して分解するのか、そして、その生理学的意義は何か?の解明を目指し研究を行っています。これまでの研究により、植物でオートファジーが機能しないと、栄養が十分与えられていても老化が促進したり、貧栄養条件で成長阻害が著しかったり、光照射が不十分で光合成が行えないような条件下で早期に枯死したりすることが明らかになりました。このような現象の理由を分子レベルで明らかにし、植物オートファジーのメカニズムおよび意義を詳細に理解することで、オートファジーを巧みに操作できるようになり、耐環境ストレス・長寿植物などの有用作物の作出を可能にします。将来的には、長寿命花卉類による新たな市場の拡大や、高ストレス条件下での作物の育成、収穫後の流通過程における青果物のロスの軽減などに貢献することを目指しています。

オートファジーによって液胞内部に運ばれた細胞質成分の電子顕微鏡写真。阻害剤により液胞内の分解を止めているため、オートファジー構造体が蓄積しているのが観察できる。球状構造の内部には様々な細胞小器官を含む細胞質成分が見てとれる。
亜鉛欠乏条件下において、オートファジーが機能しない植物は著しい葉の生育阻害と早期枯死を示す。
亜鉛欠乏条件下において、オートファジーが機能しない植物は著しい根の生育阻害を示す。
人の顔に見えるオートファジー構造体。口のように見える部分は細胞小器官ミトコンドリア。