取組み内容

商学部では「SDGsに関する商学的研究」を10名の教員が文理融合で実施し、その成果を商学研究入門という講義でオムニバス形式で紹介している(明治大学社会科学研究所の総合研究、令和1~4、代表:商学部長・出見世信之)。

私が研究対象とするモンゴルの発酵馬乳(クミス)は、夏の草原の暮らしをいろどる酸味と発泡性のある爽やかな低アルコール飲料である。かつてはユーラシアの遊牧民族に広く飲まれていた発酵馬乳の伝統的製法は、20世紀に急速に進んだ定住化とともに消えつつあるが、今も遊牧が基幹産業であるモンゴル国の草原のゲルには例外的に残っている。発酵馬乳は高い薬効のみならず(3.3)、微生物の多様性(15.6)、持続可能性(12.8)、自然保護(15.1)、家畜福祉、地域振興(12.b)など多くの価値のある発酵食品だが、モンゴル国にも及ぶグローバル化の影響でその製法にも変化が生じており、継承は喫緊の課題である。私たちはモンゴル国の研究者らとともに、名産地ボルガン県モゴド郡の発酵馬乳の製法とそれをとりまく自然環境(テロワール)を記録・検証し、モゴド郡を拠点に博物館展示などを通した継承を試みている(11.4)。

2019年夏、調査地のモゴド郡にあるSDGs指定校で2日間にわたり環境教育を実施した際の集合写真。多くは遊牧民の子供たちで、平日は郡中心にある寮で暮らしながら学校に通い、週末に草原のゲルに暮らす家族の元に戻っていく。伝統食研究の遂行には地元住民とのパートナーシップが不可欠である。