取組み内容

私達がいる宇宙はあらゆる粒子が区別できないような高い対称性をもつ状態から始まり、その対称性がすこし破れて現在のような多様性を獲得したと考えられています。このように少し不完全だが無秩序ではない環境というのがミソで、その中で千差万別の現象が生じます。

我々の研究室では、宇宙を物質に人間を電子に置き換えて、無秩序ではない環境下で生じる不思議な現象を探索しています。電子にとっての宇宙である物質はひとつではなく、不完全だが無秩序ではない「隠れた秩序」をさまざまな物質の中に見出すことで、その環境下で七変化する電子の振る舞い、すなわち物質の性質を楽しむことができます。つまり、隠れた秩序の探索は多様な物質に秘められた未知の性質を引き出すことに繋がり、その果実は機能性物質として社会に還元されることになります。隠れた秩序を背景として、電流を使わず磁石の流れによって情報・エネルギーを伝達する、熱振動を電気に変換する、音を磁石に変えるなど、さまざまな機能性物質の研究を理論的に進めています。このような物質の性質は知的好奇心をくすぐるだけではなく、エナジーハーベスティングの基盤を提供し、持続可能な社会の実現に貢献するものと考えられます。

初期の宇宙は「正常状態」(対称性の高いオレンジの点)から始まり、現在の宇宙は「超伝導状態」(対称性の低いオレンジの点)になっている。同様の対応が金属の正常状態と超伝導状態の間にも成り立つ。
超伝導浮上実験の様子。液体窒素温度以下に冷やした超伝導体は磁石のレールに沿って動く。レールの上だけでなく、下にも浮遊する。