取組み内容

遊牧とは、群れをなす蹄のある動物(ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ラクダなど)を飼育しながら乳、毛、皮、肉を資源とし、畜群に適した草地を求めて季節移動する生活様式である。5万年前以降、現生人類がユーラシアに拡散するなかで、中東から中央アジアに広がった人びとが遊牧生活をうみだしたのではないかといわれている。私は現在、トルコ、キルギス、モンゴルを中心に歴史学・人類学・地理学の専門家と「ユーラシア比較遊牧社会研究」に取り組んでいる。

人類は、狩猟・採集から定住へ「発展する」ため、遊牧とは「遅れた」生活だと考えられてきた。しかし今日の世界で遊牧生活こそが最先端であり、SDGsのお手本である。動物の移動に追尾することで始まった遊牧生活は「少量生産、少量消費」に基づくため、貧富の差は最小限に抑制される。家庭内では男女の共同作業が不可欠である。気温の変化にあわせて人間と家畜とが移動する生活は、定住したままエアコンを使用し、地球を温暖化してきたわれわれに比べてなんと優れていることか。もともと遊牧民には自然を所有するという考えはなかった。自然と共生する長い歴史をもつ遊牧民の知恵にわれわれは今こそ学ぶべきである。

キルギスの夏営地にて:ウマの乳絞り(2005年7月)
トルコの夏営地にて:首に鈴をつけたヒツジ(2014年9月)
モンゴルの夏営地にて:太陽光発電を利用した遊牧生活(2017年8月)