取組み内容
「まちづくり」には様々なテーマの活動が含まれますが、住民それぞれの思いや願いを大切にしながら、自分たちの暮らしを自分たちの手でよりよくしていくという共通の目的があります。
かつての高度経済成長期の都市整備は生活の利便性を高めましたが、公害や交通問題、地域のつながりの希薄化など、多くの課題も生み出しました。こうした問題を自治的に解決する営みとして「まちづくり」が注目され、町内会や自治会、ボランティア団体、NPOなど多様な担い手によって展開されてきました。
同時に、「まちづくり」は住民の自己成長を支え、地域の公共性を育む活動でもあります。多様な住民がともに地域への理解を深め、課題を共有し、その解決を模索していく過程においては、住民同士の学び合いが決定的に重要です。そして、そのような経験の積み重ねが、地域コミュニティにおける暮らしと公共性の基盤をつくっていきます。
歴史的な町並みとその価値を守り活かそうとする奈良町の住民主体の実践にも、そうした展開を確かめることができます。私は、これらの実践に参加しながら社会教育・生涯学習の観点から研究に取り組むとともに、実践の記録化や振り返りを支援しています。
奈良町は、平城京の外京にあたり、奈良市の旧市街地に重なる町々の総称です。東大寺や春日大社、元興寺をはじめとする寺社仏閣も有名ですが、町家が連なる歴史的な町並みが今も残っています。この町並みの保存と活用は、1970年代のまちづくり運動を起点として受け継がれてきました。
毎年秋に開催される「ならまちわらべうたフェスタ」は、昔懐かしい遊びや体験活動を、まち全体で世代をこえて楽しむ催しです。遊びや交流を通して地域の文化や歴史に触れ、住民同士のつながりを深める大切な機会となっています。
この「ならまちわらべうたフェスタ」は、30年以上続く歴史ある事業で、実行委員会には30をこえる団体や施設が参加しています。まちの歴史と文化を守り育てるため、準備や運営、振り返りを通じて学び合い、試行錯誤を重ねています。
同じく秋に開催される「奈良町見知ル」は、普段はみることができない奈良町の文化財や史跡、町家や近代建築に触れ、学ぶことができる一週間の催しです。奈良町を構成する「きたまち」「ならまち」「高畑」「京終・紀寺」それぞれでプログラムが準備され、各地で実施されます。
「奈良町見知ル」の運営にも、多くのまちづくり団体や地元住民、民間事業者や行政といった多様なメンバーが関わっています。奈良町の歴史的・文化的価値を広く発信することを目指しながら、運営に携わる人たち自身もまちの魅力や可能性を学び合い、再発見しています。