取組み内容

有権者の政治意識・行動を研究をしています。近年注目しているのは、日本における女性議員の少なさと有権者の男女平等意識の関係です。日本では、女性議員が非常に少ない一方、有権者は女性に対して必ずしも差別的な選好を持たないと指摘されてきたからです。

私が日本とカナダの研究者と共同で行った研究では、選好が必ずしも投票行動に反映されない理由として、周囲の選好への期待が影響しているのではないかと考えました。自分の選好が社会の少数派だと認識していると、選好が行動に直結しにくい可能性があるからです。

この問題意識を検証するため、日本の有権者を対象に「議員として望ましい」候補者と、「選挙で勝利しそうな」候補者を聞いたところ、多数派の回答者が女性を男性よりも議員として望ましいと答えたのに対して、女性を男性よりも勝利しそうだと答えた人は少数派でした。自らの選好と周囲への期待の間にズレを感じる人が多くいたのです。

上の分析結果は、社会における選好分布を客観的に把握できれば、日本人の(実は低いとはいえない)男女平等意識が、より正確に政治に反映される可能性があると示唆しています。

論文の解説記事はこちら。
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2025/qfki0t000004ijae.html

今回紹介した論文は、”The Preference-Expectation Gap in Support for Female Candidates: Evidence from Japan”というタイトルで、Public Opinion Quarterlyから2025年5月に出版された。論文本文はhttps://doi.org/10.1093/poq/nfaf002からオープンアクセス(無料)で公開されている。
民族的マイノリティや外国人に対する政治意識も研究関心の1つである。昨年7月には共同研究者で、アジア系アメリカ人の世論を専門とするDr. Fan Luを日本に招いた。その機会に横浜にある海外移住資料館をゼミで訪問し、海外におけるマイノリティとしての日本人に関する学びを深めた。
現在進行中の研究の1つでは、日本人の外国人に対する態度、特に日本における黒人差別を検証するオンライン調査実験を実施している。実験では、写真のようなランダムなプロフィールのペアを被験者に提示し、アパートに住む隣人としての好ましさについて答えてもらう。