取組み内容

近年、私が取り組んでいる研究の一つに、「なぜ近年の都市再開発や商業施設は『みどり』を求めるのか?」という問いがあります。たとえば、2023年に開業した麻布台ヒルズや2024年のグラングリーン大阪には、芝生広場などの大規模な「みどり」が整備され、人々が心地よく過ごしています。
けれども、「みどり」は本来、直接的な利益を生むわけではなく、むしろ維持管理にコストがかかる存在だったはずです。にもかかわらず、なぜ多くの再開発であえて「みどり」が生み出されているのでしょうか。
注目すべきは、それらの空間が「ウェルビーイング」や「イノベーション」といった概念と結びつけられて語られている点です。「みどり」は、そうした価値を媒介することで都市に「生産」されているとも言えます。その意味で、都市の「みどり」はきわめて社会的な存在でもあります。
「住み続けられるまちづくり」のためには、分野横断的な知が不可欠です。さまざまな先行する知見を踏まえつつ、私は社会学の立場から、都市における「みどり」の可能性と葛藤を、学生とともに引き続き考えていきたいと思っています。

ゼミではまち歩きを実施しています。今年の前期は学生からの提案もあり、東京における再開発と、さまざまな「みどり」をめぐりました。麻布台ヒルズでは、緑化を可能にした理念について確認し、中央広場をはじめとするランドスケープを体感しました。
次に訪れた芝公園では、部分的に芝生が養生されていました。芝生を守りながらどのようにオープンスペース性を確保するかということも課題です。
旧芝離宮恩賜庭園はもと大名庭園であり、静謐な空間は周囲を囲む高層ビルと極めて対照的です。ゼミのまち歩き後には、再開発の現状と「みどり」の異なる空間的展開について、議論を重ねました。