取組み内容

環境気象学研究室では、気象と物質循環(特にCO2の動態)を理解することで、持続可能な人間活動を考える教育研究をしています。冷涼な地域の湿地にはミズゴケという植物が多く生育し、ミズゴケは枯死体を堆積させることで「泥炭」と呼ばれる有機物に富む土壌を形成します。この「泥炭」が稀少な動植物の生存の基盤となり、炭素(CO2)を大気から隔離することで地球温暖化を緩和します。しかし北米大陸やヨーロッパでは、開発や園芸資材を得るための泥炭の乱獲が問題になっています。一度湿原から泥炭が取り去られると再生が困難になるだけでなく、湿原が炭素吸収源から炭素放出源と変化します。これは、湿地が地球温暖化を促進することを意味します。当研究室では、ミズゴケの好適な栽培条件を探索するため、生田キャンパス屋上で水環境や光環境を変えながらミズゴケを育て増殖する研究をしています。また、湿原植物は蒸発散量が多いため屋上で育てるとヒートアイランド緩和も期待できます。都市にある大学の屋上で、資源植物でありヒートアイランドも緩和する湿原植物の多面的な機能を理解し発信することで、湿原の保全の重要性を広く知っていただく取り組みを続けています。

夏季に実施した基盤の種類と潅水方法の違いがミズゴケの成長量に及ぼす影響の調査風景. このほかに遮光条件を変えた試験も実施しました.
 冬季に実施した水温の違いがミズゴケの成長開始の時期に及ぼす影響の調査風景. この他に夕方から夜の補光による日長の影響を検討する試験も実施してました.