取組み内容

光合成と聞くと高等植物を思い浮かべるかもしれませんが、我々の研究室で扱っているのは水中を泳ぎ回る微生物、ミドリムシです。ミドリムシは光環境に鋭敏に応答して、暗すぎる時には明るい方へ、逆に明るすぎる時には暗い方へと、遊泳方向を調整する機能(走光性)があります。我々はこれまで、ミドリムシの培養液に下から強い光を照射した時に形成される生物対流と呼ばれる流れの秩序構造に着目し、その発生メカニズムの解明に取り組んできました。この生物対流は、実はお味噌汁や地球のマントルで見られる対流と、本質的には同じような仕組みで発生していることがわかってきています。現在は、この対流がミドリムシの生体反応にどのような影響を与えているのかを調べています。具体的には、生物対流の過程で個々のミドリムシが置かれる光環境に着目し、人為的に再現して、光合成の効率を測定しました。その結果、驚くことに、どのような時間変化を与えても、光の総量が一定であれば光合成の効率は変わらないことがわかりました。ミドリムシは栄養源としても着目されている生物ですので、これらの成果が効率的なエネルギー供給、食料供給へとつながることを期待しています。

ミドリムシが作り出す対流パターン
ミドリムシの顕微鏡写真
生物対流が発生するメカニズムの模式図